衛生監視員はじめました

食品衛生の話と、衛生監視の公務員試験のことについて書きます。

わたしが公務員を目指した理由

 

私は、小学生の頃、いじめにあっていました。

きっかけは特になく、強いて言うなら「私が加害者と名前が近かったから」だと思います。

 

いじめの始まりは、小学一年生のある日のことでした。

校庭の池に鯉を見に行った帰り、池の上にある私のクラスから、加害者である男子児童が私の色鉛筆を落としたのを見ました。

その日のことは、あまり憶えていません。隣にクラス担任の教師がいたことと、色鉛筆は折れて使えなくなってしまったことは憶えています。

 

後日、私の家に加害者が家族と一緒に来て、玄関で話し合いになりました。

加害者の母親は「うちの子はやってない」「お宅の子が手を出した」と言うばかりで、一切こちらの話を聞いてくれませんでした。

私はその空間が怖くて、俯いて泣いていました。

しばらく母親同士で言い争いが続き、沈黙の後、私の母が言いました。

「本当にやってないの?」

私は、頷きました。

「向こうは違うって言ってるけど、本当なの?」

私はまた、頷きました。

 

「・・・嘘をついてるの?」

 

私は驚きました。

加害者の母親は、加害者を信じています。目撃者のいる事件なのに、加害者が嘘をついていることくらいすぐ分かるはずなのに、信じているのです。

しかし、私は、その時疑われていました。信じてほしい人から。

 

その場にいる誰もが、私が嘘をついていることを望んでいるのだと思いました。

世界にひとり、取り残されてしまったような感覚でした。精神的に限界を迎えていました。

そして、耐えきれず、首を縦に振りました。

 

加害者の母親はため息をつき、「色鉛筆は弁償しますから」と嫌味たっぷりに言いました。

そこから先はもう憶えていません。目の前は滲んで、よく見えなくなって、それでもこの世界が続くような気がして、怖かったような気がします。

 

次の日から、いじめはエスカレートしていきました。

文房具や教科書を隠されたり、体育の時間に背後から蹴られたり、音楽の時間に背中を殴られたり、いじめの内容は様々でした。

私がいじめられている間、クラスは静かでした。

いつも仲良くしてくれる生徒も、下を向いて目を合わせてくれませんでした。

 

「〇〇くん、どうしてそんなことをするの?」

担任の教師が言うと、加害者は、

「こいつが悪いことをしたから」

と言います。

彼の中で私は悪者でした。

 

先生は、助けてくれませんでした。

教員はいい仕事だなと、ぼんやり思いました。目の前で何が起きても知らん顔で許されるなんて、ずるいなと思いました。

 

小学二年生のある日、私は「学校に行きたくない」と母に言いました。 

母は理由を聞かず、「絶対にだめだ」と言って座り込む私の腕を掴みました。

私はいじめの事実を伝えましたが、

母は私に「嘘つき」、「わがまま女」と言い、一切聞きませんでした。

毎日、私は泣きながら登校していました。

 

いじめが始まって、一年が経ち、気付くと私は毎日死ぬことばかり考えるようになっていました。

両親は、私を信じてくれないと思っていたし、兄も受験によるストレスから私に八つ当たりをするようになって、心の拠り所がなかったからです。

クラスメイトは、勉強を教えてほしいからすり寄ってくるだけの存在だと思っていました。

 

人と話すのは苦痛でした。それでも誰かとコミュニケーションをとりたくて、私は本を読むことにしました。

本は私を信じてくれないけれど、疑いもしません。

 

本を読む私を、児童館の職員や学校の教師は褒めました。

本の内容を母との会話の糸口にして、少しでも信じてもらえる対象になりたいと思うようになりました。

しかし、それはうまくいかず、母は何かあると

「信頼を取り戻すのは難しいからね」と言いました。

父は、昇任試験のことで頭がいっぱいで、何かあると怒鳴りました。

二人とも毎日上の空で、話を聞いてくれませんでした。

 

私は、子どもとして親の元にいなければ生きられない期間が終わったら、いつか、誰かを救う仕事に就いて、人生を謳歌したいと思いました。

 

中学生になってからは、同じ部活動の同級生の会話に混ざることができなくて、いじめの対象にされました。

職員室の前にある会議室で、2週間に1回、同級生の担任教師、同級生3名、私の計5名で、「私が彼らと仲良くしようとしないこと」について、話をさせられました。

時には自宅に電話がかかってきて、同級生グループのリーダーに責められることもありました。

 

人間関係が辛くても部活動を続けたのは、部活動が本当にやりたいことだったからだと思います。

先輩は厳しく、上下関係がはっきりしていて、指導も他人を追い詰めるようなものでしたが、私の居場所でした。

 

中学生になってからも私は、クラスで相変わらず馴染めず、部活動に打ち込んでいました。

ある日、登校中に知らない女生徒から声をかけられて、「さまりさんを見て、凄いな、かっこいいなって思った」と言われました。

 

私は、初めて世界にひとりではない気がしました。

 

直接の関係がなくても、誰かの心を動かすことができること、

誰かを支えることができること、

そして、一人でも多くの人の心を動かすためには私が成長しないといけないこと、

彼女の一言は、多くを教えてくれました。

 

それからは、自分と向き合い、「好き」について考えるようになりました。

思い込んで無理に好きになろうとせず、本当に好きなことを選択してきました。

得意なことと好きなことが違っていても、努力でカバーしました。

 

こうしてできた道のお陰で今があります。

 

「全ての人の生活を支える仕事である公務員として、好きな分野で働いて、少しでも多くの人を救いたい」

 

それが私がこの仕事を選んだきっかけです。

いじめの構造―なぜ人が怪物になるのか (講談社現代新書)

いじめの構造―なぜ人が怪物になるのか (講談社現代新書)