衛生監視員はじめました

食品衛生の話と、衛生監視の公務員試験のことについて書きます。

鶏肉を生で食べる未来はくるの?

鶏肉を生で食べる習慣は、宮崎県と鹿児島県の一部地域で昔からあり、現在でも両県の飲食店やスーパーでは鶏刺しや鶏たたきが扱われています。
インターネットにも、鶏たたき用の鶏肉を通信販売する業者が数多くあります。
農林水産省の畜産統計調査によると、ブロイラーの飼養羽数、人口当たりの鶏肉の消費量は、東日本より九州を含む西日本で多いことが分かります。
しかし、現在、鶏肉の生食は珍しいものではなく、日本全国で食べられるものになっています。

 

鶏肉の生食には、食中毒のリスクがあります。
特に、全国における年間の事件数が二番目であるカンピロバクター食中毒の原因食品は、ほとんどが生や加熱不足の鶏肉であり、鶏肉を生で食べるのは危険であると考えられます。
また、北米、オーストラリアなどの先進国でも、この10年間で大幅に患者数、事件数が増加しています。

 

カンピロバクター食中毒の原因菌は、ほとんどがカンピロバクター・ジェジュニです。
まれにカンピロバクター・コリであることもあります。

 

カンピロバクターは、極めて少ない菌量で感染が起きます
一度カンピロバクターに感染した鶏が鶏舎に入ると、1週間で同一鶏舎内のほとんどの鶏が保菌状態になるとも言われています。

 

カンピロバクター食中毒の潜伏期間は、2~5日(平均2~3日)で、主な症状は下痢、発熱(平均38.3℃)、吐き気、倦怠感、腹痛、頭痛です。

 

カンピロバクター食中毒は続発症として、ギランバレー症候群という末梢神経の病気を発症する可能性が示唆されています。
ギランバレー症候群は、急性・多発性の炎症性神経障害の一つで、主に筋肉を動かす運動神経が障害され、四肢に力が入らなくなる病気です。
重症化すると、呼吸菌が侵され、死亡することもあります。
ギランバレー症候群の15~20%は重症化し、致死率は2~3%であると言われています。
ギランバレー症候群について、詳しく知りたい方には、『がんばれ、ふんばれ、ギランバレー!』がおすすめです。

 

ふんばれ、がんばれ、ギランバレー! (ワイドKC モーニング)

ふんばれ、がんばれ、ギランバレー! (ワイドKC モーニング)

 

 

この本は、22歳でギランバレー症候群を発症した女性の闘病記です。
教科書やインターネットで得られる知識とは違った、生の声が描かれています。
長いリハビリの末完成したエッセイですが、湿っぽくなく、力強い内容です。
ぜひ、読んでください。

 

さて、もし今後安全に鶏の生食をするならば、牛肉の生食と同様に規格基準を作り、運用する必要があります。
しかし、鶏肉は個体が小さく、牛肉のような加工を行うと可食部が極端に減ってしまいます。
鶏肉を安価で提供するためには、生食用の鶏肉を作るのはあまり現実的ではありません。

 

現状として、生食用の鶏肉はないため、鶏肉はしっかり加熱して食べることが大切です。
鶏肉を調理する時は、鶏肉に触れた手指、調理器具の衛生管理、他の食材への菌の付着がないように注意することも忘れないようにしてください。