衛生監視員はじめました

食品衛生の話と、衛生監視の公務員試験のことについて書きます。

ボツリヌス菌による食中毒について

ボツリヌス食中毒は、発生件数は少ないですが、致死率が高い食中毒です。
ボツリヌス食中毒は、主にボツリヌス菌(Clostridium botulinum)が産生するタンパク毒素によって起こります。特異的な神経症状を伴う病気として、古代ギリシャ・ローマ時代から知られていました。(ソーセージ中毒)
ボツリヌス症(botulism)は、ソーセージ・腸詰めのラテン語“botulus”に由来しています。

 

 

ボツリヌス症の分類

主なボツリヌスによる疾患は、①食餌性ボツリヌス中毒(ボツリヌス食中毒)、②乳児ボツリヌス症、③創傷性ボツリヌス中毒です。
①は、食品中にボツリヌス菌が産生した毒素による食中毒(毒素型中毒)ですが、②と③は、体内にボツリヌス菌が感染し産生した毒素による食中毒(感染型中毒)です。
この他に、腸管にボツリヌス菌が定着し、毒素を産生することによる腸管定着性ボツリヌス症や、原因食品や感染源が不明な分類不能ボツリヌス症もあります。

乳児ボツリヌス症については、こちらをお読みください。

 

ボツリヌス菌の性状と分類

ボツリヌス菌の毒素は、産生する毒素型によりA〜F型に分けられます。このうち、人に毒性があるのはA、B、E、F型です。
ボツリヌス菌の毒素は熱に弱いため、80℃20分または100℃数分程度の加熱で効果をなくします。
日本では、E型による食中毒がほとんどです(90%)。

ボツリヌス毒素は、自然界に存在する毒素のうち、最も致死力の高い神経毒の一つです。食品中で、ボツリヌス菌は、神経毒素に無毒成分の結合した複合体を産生します。複合体は、無毒成分の働きで胃を通過し、小腸から吸収され、リンパ管内で神経毒素と無毒成分に解離します。神経毒素は、神経・筋接合部や自律神経節及びその末端に作用し、神経伝達物質であるアセチルコリンが放出される際にその遊離を阻害し、弛緩麻痺を起こします。
また、発育条件や培養上の性状によりⅠ〜Ⅳの4群に区別されます。Ⅰ型は熱に強いタイプ、Ⅱ型は低音でも発育するタイプです。

 

ボツリヌス食中毒の症状

食後8〜36時間(遅い場合では7日)で、悪心、嘔吐、下痢などの症状があり、その後頭痛とめまいを伴う前進の違和感、視力低下、かすみ目、対光反射の遅れや欠如などの症状が出ます。呼吸困難となり、死に至ることもあります。致死率はおよそ20%と言われています。
通常数日から数週間で回復しますが、1年以上かけて全快することもあります。

 

ボツリヌス食中毒の原因食品

主な原因食品は、からし蓮根などの真空包装、里芋などの缶詰、ハヤシライスの具などのレトルト類似食品、いずし、なれずしなどです。
ボツリヌス食中毒は、ボツリヌス芽胞に汚染された食品が、その加工工程において、菌の発芽や増殖とともに産生するボツリヌス毒素により起きるため、食品中でボツリヌス芽胞が発芽するための酸素条件や時間、温度、pH、水分活性などの条件が満たされる食品は原因食品となります。

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治療方法

ボツリヌス食中毒の治療には、抗毒素治療が有効です。日本では、1962年に抗毒素療法が導入されて以来、致死率は導入以前の約30%から約4%に低下しました。

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予防方法

足の裏や銀杏のような臭い(酪酸発酵臭)のする食品は、100℃で数分以上加熱して食べるか、もしくは、食べずに捨ててください。

 

食品衛生学 (栄養科学イラストレイテッド)

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図解 食品衛生学 第5版 食べ物と健康、食の安全性 (栄養士テキストシリーズ)

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